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中屋彦十郎薬舗による「尾山のくすり大将」第24号 2002年9月16日
丸粒混元丹(まるつぶこんげんたん)開発秘話
丸粒混元丹(まるつぶこんげんたん)開発秘話
あの粒になった混元丹はあなたが開発したのですか。ほんとですか、と言う人がいたので私は大変不愉快な思いをしました。
すでに30年も経っているので少し真実を述べてみたいと思います。
現場に居合わせたものしかわからない「秘密の暴露」をすることによって私が開発したのですと言うことを明らかにしたいと思います。
混元丹は元々は練り薬です。練り薬というのは練り歯磨きの中味を想いだしていただければわかると思います。
これを、時代によって貝殻や曲げ物やプラスチックの容器に薬を入れ、紙袋で包んでいました。中味が練り薬ですのでこぼれたり、発酵して爆発して汚れたりで良く返品がありました。
皆様から飴玉にしてほしいとか、カプセルに詰めたらどうかとかいろいろ言われました。中にはあからさまに、薬剤師なら薬剤師らしい仕事をしたらどうかと直接言う人もいました。
私はなんとかしなければいけないと思いましたが厚生省へどんな必要書類を揃えて提出すればいいのか全くわかりませんでした。
会社は今だかつて新製品を出したことはなくどこから手をつけていいのか見当もつきませんでした。先ず、石川県の薬事係りを訪ねてやり方を質問しても要領を得ず、厚生省が主催する製造基準の説明会があるそこへ出てみたらどうかというのでともかく出席することにしてみました。
ところが、出るにはでたけど最初はさっぱり理解できませんでした。そこで、出席者から薬事研究所へ行ってみたらどうかというアドバイスを得て、後日、富山の薬事研究所を訪ねてみました。
ある程度の輪郭を把握はできましたが、具体的な手続きまでは教えてはもらえませんでした。
もう、申請書の見本をみせてもらうしかないと考えました。私はかつての大阪の修行先の漢方薬問屋のM商店の試験室の永井さんにこの話をすると申請書類一式を立会いのもとで見せてもらうことができました。
もちろん丸秘書類ですから社外の者に見せるのは極めて異例のことです。そこで、配合されている 各生薬の規格が日本薬局方の規格に合致していれば「日本薬局方 甘草 」と記載すればいいということです。
それ以外の生薬は日本薬局方外として規格書を整備すればいいということなのです。
実はそれが又難しい作業なのです。確認試験、灰分試験、純度試験、乾燥減量試験、重金属試験を整備しなければならないのです。
配合されている各生薬の試験、規格が整備されたら、次は丸粒混元丹の製剤試験をしなければなりません。確認試験、灰分試験、乾燥減量試験、重金属試験、崩壊度試験などを実施しなければなりません。
この試験は石川県の衛生研究所に依頼しました。当時この会社には 試験室はなく何も整備されていなかったからです。
それを仕上げて、最後に経時変化成績書を添付しなければなりません。これがチンプンカンプンでした。私は永井さんの助手で有本さんという人がいましたが、話中に有本さんが席を立った瞬間にその会社の或る製剤の経時変化成績書を盗み目しました。
ああ、こうやってやるのかと私は思いました。
金沢へ帰り、経時変化成績書はそのことを想いだしながら、作文しました。これらをすべてまとめて石川県を経由して厚生省へ「丸粒 混元丹」の製造承認申請書を提出しました。最初にこの仕事にとりかかってから四年の歳月が流れていました。
一般売薬でも新製品ですから承認審査は厳格を極めているという話を聞きました。これをスムーズに進めるには代議士の力を借りるしかないと考えました。
当時、石川県選出の桂木鉄夫代議士に厚生省へ働きかけてもらうため、私は代議士の自宅を訪ねました。代議士は快く了承してくれました。
同席した秘書が後に石川県議選に立候補した吉村外茂勝氏です。彼は実践的に動いてくれました。
そして、厚生省からの承認が下りてきたのは、それから一年以上も経過していました。それから製造準備にとりかかりました。
必要な機械類を購入し、顆粒の製造、丸薬の製造、コーチング(丸衣)、自動包装と仕事を進めました。うまくできなくて、徹夜したこともありました。
この「丸粒の混元丹」を発売したのは1972年(昭和47年)ですがこの製剤の発表会を卯辰山のホワイトハウスというレストランで行ったのですが、その日は奇しくも連合赤軍の浅間山荘事件のあった日だったのです。
私にとっても終生忘れる事のできない日になったのでした。実名をあげましたが、すでに故人になられたり、現職でなくなくなったりで、30年の年月が経過していることもありお許し願いたいと思います。
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